2017年06月07日
社会・生活
企画室
岩下 祐子
関東地方も梅雨入りした。ジメジメとした空気がうっとうしいと、早めの梅雨明けを願う人も多いだろう。でも、私は梅雨の雨の中に祖母を思い出す懐かしい匂いを感じる。
子どもの頃、祖母に連れられて箱根へ小旅行に出かけたことが何度かある。箱根は四季折々様々な表情を見せてくれるが、中でも雨に濡れながら水色や薄紫、ピンク色のグラデーションで目を楽しませてくれるアジサイ。その美しさが強く印象に残っている。祖母と一緒に乗った箱根登山鉄道では、車窓から手に届きそうなところにたくさんのアジサイが咲いていた。
祖母は降りしきる雨を楽しむように、「梅雨の時期に雨が降らないと夏に水不足になり、作物が育たず、お米や野菜が凶作となってしまうの。梅雨の雨には感謝しなければね」と教えてくれた。祖母にとって、雨を楽しむ象徴が箱根のアジサイの花だったのかもしれない。その思いを引き継いで、私は毎年、母の日には実家の母にアジサイの花を贈るのが習慣となり、母となった今は子供たちからアジサイの花を贈られるようになった。
(写真)筆者
その箱根登山鉄道は、梅雨の時期になると「あじさい電車」の愛称で親しまれる。沿線にアジサイの植栽が始まったのは1973年頃。もともとは、土砂崩れ防止の土留めが目的だったようだが、1985年頃には沿線の植栽数が1万株に達し、すっかり箱根の風物詩として定着した。
小田原から強羅まで片道8.9キロメートル、標高差500メートル余りの距離を3回のスイッチバックを繰り返しながら登っていく。高速で走り抜ける首都圏の電車とは違い、登山鉄道ならではのゆったりとしたスピードがじっくりと花を鑑賞したり、写真を撮ったりするのに丁度良いようだ。
今年5月には足元から天井まで大型化した車窓を設けた新型車両が投入され、急カーブの線路際に咲くアジサイが一段と間近に楽しめるという。
今年の梅雨は祖母の思い出とともに、「あじさい電車」に乗り、雨に感謝しながら雨を楽しんでみたいと思う。
■あじさいライトアップ
期間:2017年6月17日(土)~7月9日(日)
時間 : 18:30~22:00
場所 : 6カ所 箱根湯本駅付近、大平台駅付近、温泉幼稚園付近(宮ノ下駅~小涌谷駅間)、小涌谷駅付近、車川(小涌谷駅~彫刻の森駅間)、彫刻の森付近
(箱根登山鉄道のホームページより抜粋)
岩下 祐子